保山耕一さん

先日は映像作家、保山耕一さんの上映&講演会へ。

かつては30年以上にわたって第一線のテレビカメラマンとして
活躍されており、
癌を患ったのを機に奈良へ移住された方。

さすがプロの映像だなぁ、と思ったのは、
ほとんどの映像には、カットごとにきちんと主役がいます。

でも、光も闇も強く美しいけれど、その間に存在する、
名もなきグレー的な存在が可憐。

木々の空間や、仏像の背後に移る影、
夕日に光る田んぼの端っこの、きっと小さなオタマジャクシや
アメンボが生を謳歌しているのだろう、わずかな水面の揺れまでが
すべて目に映り、自分のちっぽけな存在までもが
圧倒的に許されるような映像でした。

そして、撮られた年月を重ねるごとに、
ひとつも主役のいない作品が増えてきます。

というのは私の勝手な感想で、
これはご本人の撮るときのテーマで変わるのだとも思います。

が、この主役のいない映像が凄い。
舞い散る桜の花びらたち、奈良の夜明け、雲海に沈んだ町…

フレームを滲み破って神様の存在を匂わせます。

Youtubeに多くの映像がアップされているので、
良かったら観てください。
いろいろ考えすぎて眠れない夜など、
ただ眺めているだけで脳が安らぎ、
翌朝は起き抜けになんだか優しい気持ちになっています。
考えることはネガティブでもいいんですよ。
自分の視点が安定してさえいれば。



https://www.youtube.com/channel/UCulGvOCOU_8_EPmSJJS9PvQ

↑ほかのご作品もぜひ大きな画面で。

この方の、プロとしての技術と能力、
それをつかむために経た時間と熱中の凄みも感じます。

言葉の力もすごいなと思いました。
映像って、ただ眺めて、
個々の心で感じればいいものだとも思いますが、
保山さんは上映会で、映像を撮ったときのエピソードや、
どんな思いで撮ったかを、ユーモアたっぷりのトークで
伝えてくださります。

人って、そんなに常々、
自分の価値観やものの見方を定めているわけではなくて、
いつも揺らいで歪んでいるものだけれど、
撮ったときの思いを人間の共通言語で伝えられると、
それを自分の心のどの眼で見ようか、感じようか、
との選択が自然と浮かび上がってきます。

そして人間は人間、カエルはカエル、葉っぱは葉っぱ。
満月は、ただ満月。
生かされて精一杯生きている。

キャッチーな「癌」とかからでもいいから、
まずは観ていただきたいです。
人には俗悪も誠実もいろんな面があるもの。

そうして観たときの感動が、だんだん自分だけの、
誰にも譲れない心の分野に滲み広がってくる、
毅然としたぬくもりを、つかむ方は多いと思う。

『指づかい』重版決定

デビュー作『指づかい』(幻冬社アウトロー)の重版が決定しました。

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なんと6刷目です。
こんなに長く読まれ続けるのは、本当にありがたいこと。

まだお手に取っていない皆さん、よかったら読んでください。


先日は、奈良の而今さんへ。

而今(にこん)と読みます。
変わったお名前ですが、ご主人曰く、禅語で、
曹洞宗 道元禅師の唱えた言葉だとか。

「いはくの今時(こんじ)は人人(にんにん)の而今(にこん)なり。
我(われ)をして過去未来現在を意識せしめるのは、
いく千万なりとも今時(こんじ)なり、而今(にこん)なり。」

「今と言う瞬間に成すべき事をなす。」という意味なんですね。

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毎月、ご主人おすすめのコース料理を出されるのですが、
毎日、ご主人自ら市場で選んだ新鮮な魚や
自家製のからすみ、ひと工夫を施されながらも
だけど素材の味を活かしたお料理が絶品です。
牛肉はレンゲで割れるやわらかさ。

料理の写真を撮りたかったのですが、同席者の手前、控えていたら、
その方々も実は、私に遠慮して取らなかったとのこと。
気遣い人間にありがちなことです。
次が楽しみ。

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その後に行ったバーでは、卵型の器に入ったカクテルを。
森の妖精が笑っているような顔。

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半分ほど飲んだ後です。
小西通りという通りを入った奥にある、異空間のようなお店。
奈良旅行される方がいたら、ぜひ見つけていただきたいなぁ。

おばあさんのレモン

スーパーにて、初対面のおばあさんから話しかけられました。

お年は82歳。
おひとり暮らしで、たまに映画やお芝居を観たついでに、
お買い物にいらっしゃるのだとか。

車の免許を取ったのは55歳。一発100点満点だったそうで、
とてもシャキシャキした方。

でも言うことはたびたびおかしくて、
「あなた、知ってた? ちくわって魚なんですって。
豚肉とちくわとお鍋に入れたら、肉と魚、両方取れていいわねぇ」
キャリアはすごいのに、ふつうのことが抜けている人っています。

話が弾み、おばあさんの車まで荷物運びをお手伝いしたところ、
車内にいたのは、おばあさん手作りのオルゴール人形。
可愛い。

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「あなた、ちょっとうちに寄りなさい。庭のレモンをあげるわ」
お言葉に甘えて、助手席に乗せていただいたところ、
話しながら難しい合流をスイスイこなされるし、
一方で、基本は相手に譲る安全運転。

のどかなお庭でいただいた、レモンとキンカン、カラスウリ、蝋梅。

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帰りは自宅まで送っていただきながら、
お互いに最近観た映画やお芝居の話で盛り上がり、
近々、一緒に映画に行くことに。

蝋梅は帰宅してから活けてみました。

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部屋中が甘く爽やかな匂い。
また素敵な方とお友達になれて嬉しい。

橿原神宮へ

所用ついでに、橿原神宮へ。

昔は奈良好きの友人よく飛鳥旅行をしたのですが、
ひとりで来るのは初めて。
8年ぶりくらいかなぁ。

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あれ、鳥居がない。

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なんでも現在、老朽化のために改修中だとか。
来年に迎える御鎮座130年の奉祝記念に合わせて、
今年中に新調されるそうです。

でも、この竹としめ縄の代替え鳥居も風情があります。

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凛と冷えた空気。
曇り空に顔をあげ、目を瞑って深呼吸すると、
頭の先から無色透明になっていく感じ。

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「カシ」の漢字には、「橿」と「樫」がありますね。
「橿」は古くに中国から渡ってきた漢字で、
「樫」はその後、日本でつくられた漢字です。

関東出身の知り合いに「橿」の字を苗字に使う人がいるのですが、
その家では謂れがわからないまま、
代々、親が子供を人生に一度は、
橿原神宮に連れていくことになっているのだとか。

同様に謂れがわからないまま、
勾玉の形を尊いものとして教えられているそうです。

どこかで途切れるものと、受け継がれるもののおもしろさ。

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境内にある深田池では、鴨がギャーギャー。

お参りするときも近くにいた男子高生が、
6人くらいで勢いよくパンをあげていました。
受験の必勝祈願でしょうか、部活帰りの散歩でしょうか。

自分が中学、高校生の頃、よく吹奏楽部の友達と、
春日大社の森で練習演奏していたことを思い出しました。
なにげなくて、かけがえのない時間だった気がします。

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大人になった身としては、久しぶりにたくさん歩いたので、
一杯くらい昼飲みしたかったのですが、
ひとりで軽く飲めそうなお店が見当たらず、
おとなしく電車に乗って帰宅。

するとその日、朝からいきなり「ムンク展に行ってくるわー」と、
東京へ行っていた母が、夜、楽しそうに渡してきたのが、
おみやげの「叫び」くん。
本名はわかりませんが、とにかく「叫び」くん。

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首が上を向いて、身体が仰け反っています。

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平面の絵をこんなくねった立体にした方の、センスがすごい。
前屈みでも直立でもない、息を吸い込むような叫び。

同じくおみやげの、ムンクが生まれ育ったノルウェーの
サバのトマト煮とワインをいただきながら、夜が更けます。

あけましておめでとうございます

あけましておめでとうございます。

今年も我が家はおせち料理を食べた後、菩提寺の元旦会へ。
お茶目なお坊さんと、働き者であたたかい檀家さんたちと
賑やかなひととき。

「お釈迦さまはお経にたくさんの漢字を使っていらっしゃるけど、
『幸』という字だけはない。
5年後、10年後にどうなっているかわからない人生で
幸せを求めるよりも、心を安寧させることが大切」

心に残るお坊さんのお言葉でした。

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午後は春日大社へ。

背後に山のあることで、霊的な空気を
ますます感じさせる神社です。

中上健次曰く、熊野が霊山とされたのは、
奈良と京都の背後に聳えていたから。
都の人々が、自分たちが来て、戻る場所と捉えたのだそうです。

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灯籠の合間をうねる枝と蔓。

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参道で空を見上げると、木々の枝葉がレースのようです。

お参りをして、夕方は護国神社へ。

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倒木を燃やす巨大な焚き火。

樹洞で回転する炎が見事。
心を持っていかれそうで、いつまでも見惚れてしまいますが、
顔が熱いです。

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たこ焼きを食べながら、付近の井戸水と、
井戸水からつくられたお神酒をいただいて、
安寧な一年を祈ります。

皆さんにとって、笑顔の多い一年でありますように。
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