しなやかとは

昨日は、某編集者さんとお食事。

そこで、ダニエル・ラノワの『ソウル・マイニング―― 音楽的自伝』
(みすず書房)が発売されていることをお聞きしました。

ダニエル・ラノワ。
プロデュースしているのは、U2、ネヴィル・ブラザーズ、
シンニード・オコナー、ボブ・ディラン、ピーター・ガブリエル、
エミルー・ハリスetc。

ブライアン・イーノのお弟子さんのような方でもあるせいか、
プロデューサーとしてはかなりのヒット作をつくるけれど、
自分名義の作品は売れない、でも体の深いところで感じさせてくれる、
叙情的かつテクニカルな変態ミュージシャンです。

私はこの方の「ICE」という曲をカヴァーしておりまして、
ぐるぐる回る世界と音に、積極的にのめり込みました。
執拗的なリズム感と和音の理論のもとに、
官能的に音楽を崩しにかかる悪魔みたいな人です。

そしてこの編集者さんとはいつものとおり、小説仕事の話より、
互いに地震で1000枚前後のCD棚が倒れた苦労話や、
イーグルスやザ・バンドやジョン・サイモンなどの音楽話で
半分以上を占めた、とても楽しくも、
後で思えば作家としての主張をし忘れた夜でした。
でもいいです。



ところで、しなやかに生きる、の意味が、
人それぞれに違うんだなと感じる今日この頃です。

カルメン・マキさんがちょっと好きにつぶやいたひと言が、
ツイッター上で論争を巻き起こしているのですが、
https://twitter.com/carmen__maki
私は、噛み合わない議論をしつつも、自由な音楽への「手法」を
誠意あるお言葉で示していらした高橋健太郎さんという音楽評論家さん
に対して、
なんだかんだいって、マキさんへの迂遠なラブレターを
書いていらっしゃるように感じます。
この方が参入なさったおかげで、マキさんがなにを伝えているのか、
わかりたくなった方も多いのではないでしょうか。
興味のある方は、良かったら読んでください。

表現って、他人から見れば爪の先ほどの、
その人のこだわりから生まれます。
それが5分間のポップスになったり、2時間の交響曲になったり、
一枚の絵になったり、400ページの小説になったりします。

思うようにいかないときもあります。
意外な壁に阻まれるときもあります。そんなとき、
さらりとその場から抜け出して、上から目線、あるいは傍観者の
つもりでいることが、しなやかなのではありません。
泥だらけの大地に根を這って、叫びたいことを叫び続ける、
じわじわと苦しみながら、次の一ミリの葉を、どこに伸ばしていくか、
どうやって自分の太陽を目指すのか、
そうして歯を食い縛り、
ときに馬鹿にされたり、みっともなく血を流しながら、
しなやかに美しく、説得力のある姿を生み出していくのだと思います。

汚くても泥臭くても不器用でも、叫び続けている方を私は尊敬し、
そんな美しい方々を尊敬していると、
堂々と言えるものを書いていきたいと思います。
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