昨日まで東京仕事。
二週間ほど前にホテルを取るときは、
なぜかどこもいっぱいだなぁと思っていたら、
ちょうど桜の見頃だったんですね。
SNSの普及で、日本の桜を知る人が世界に増え、
海外からの観光客が急増しているのだとか。

初日はお世話になった編集者さんの最後の出勤日に、
新しい担当さんとの顔合わせを行っていただいて、
出会いの尊さを思うひとときでした。
その勢いで飲んで食べて、そのまま毎日が二日酔いでした。
上野に行く機会もあり、せっかくなので不忍池を散策。
お天気にも恵まれ、お花見客で溢れています。
お猿さんが大道芸をしていたり、
屋台からはアユの塩焼きやスモークチキン、トウモロコシ等の
いい匂いが漂ったりで、お祭り気分。

そんなうららかな中、私が向かうのは、

不忍池のほとりにある、ピンク映画館の上野オークラ劇場。

現在、『溺愛』の高原秀和監督の作品が、二本上映されています。
『フェチづくし 痴情の虜』主演:榎本美咲、涼南佳奈、NIMO
『蒼井そら 肉欲授業』主演:蒼井そら

榎本さんの、そこはかとなく精神のイッている女の子の目つきがイイ。
映像も美しいです。
同じ部屋の中で、カメラワークが、
日常と、日常を突き抜けた変化を映しています。
特に十数年前のご作品、『肉欲授業』が素晴らしい。
社会から外れているけれど、特に悩んでいるわけでもなく、
一生懸命生きているけれど、肩の力が抜けきった女の子の、
一瞬の飛翔と永遠の堕天。
これはもう一回観たい。
脚本もさることながら、
映画ならではの映像の構図と、編集の妙、
そして蒼井そらさんの演技が凄い。
少女の屈折が描かれているようでいて、
乾いた屈託の無さがあり、
昨日までの自分を許されて、
よっし明日の朝もとりあえず起きよう、と思う作品。
それにピンク映画館って、なんて居心地の良い場所なんでしょう。
上野オークラの場合は入場料1600円で一日中いられるし、
休憩時間がないので、客席はずっと薄暗いままだし、
ロビーでふつうに煙草が吸えるし、
お腹が空いたら250円でカップラーメンが食べられるし、
あんぱんとかもあるし、アイスクリームもビールも売ってるし、
深夜も営業しているから、終電を逃したら寝に行ってもいいしで、
私が男だったら、なにもない休日は
ずっとここでだらだらと過ごしていたいなぁ。
私の行った日は女性客も何人かいましたが、
皆さん女装の男性のようでした。
さて、お花見客で溢れている東京だったので、

渋谷での打ち合わせの後、タクシーがつかまらず、
深夜の2時に、まさかのタクシー難民となって、
目黒のホテルまで歩いて帰るなどのアクシデントもありました。
あと、女性編集者さんとバーで打ち合わせをしていたら、
お隣にふたり連れの白人男性がいて、
それがかなり腐女子心をくすぐる風情で、
見た感じ、アメリカンな20代と、スーツの似合う50代。
意外と20代のほうが責めだったりして…
でも50代のほうがスーツの下はマッチョだったりして…
などと妄想していたら、
いきなり彼らが声をかけてきました。
「お酒を奢っていいですか」「カラオケ行きませんか」
あーガッカリ。なんだよ女をナンパしちゃうのかよカラオケとか
行きたいのかよあー残念。
おふたりとも出張中の米軍関係者で、
お酒を奢らせはしませんでしたが、お話はおもしろかったです。
でも貴重な日本滞在期間のひとときを私たちのような女との会話で
潰すなんてガチな雰囲気があるだけに返す返すもマジかよあー残念、
と心で呟きつつ、
魅力的な人たちに思わぬ取材をさせていただけて、楽しい一夜でした。

そして最終日。

以前住んでいた町のご近所さんたちとの、
毎年恒例の、砧公園でのお花見会。


元定食屋のお母さんがご馳走をつくってくださり、
かつての常連さんたちと、お酒を片手に囲みます。
駅から公園に向かう途中、
懐かしい商店街の人たちとも再会できて、嬉しかった。

頭上は桜、また桜。
桜の枝は毛細血管のようだといつも思います。
昔から、桜の咲いている時期は虫が出てこない、
だから地べたに寝転んでも平気、
そうして花びらが散り終わった頃に、虫が湧いてくる、
…と言われているのですって。
桜の下には死体がある、を連想させます。

飲んでいる間中、ちらちらと花びらが舞っていました。
お酒にもお弁当にも載って、
みんな花びらと一緒に飲んで食べていました。

こういう一日があるだけで、三ヶ月は生きていける。
つくづく、いい町に住んで、
いい人たちと交流させていただいていたなぁ。
それは戻れるような場所として永遠に持っていて、
戻らない場所なんだよなぁ。

さて奈良に帰って、また仕事です。


庭の桃、木瓜、水仙。

フキノトウはトウがたっていました。
紅梅もきれい。

仕事です、と言いつつ、今日は母と宝塚へお出かけ。
環状線や福知山線の車窓からは、桜の下でお花見をしている
人たちの楽しげな様子と、川面に移る桜の影。
関西は関東よりも開花が遅く、風も柔らかいので、
いまは満開から散りはじめの、見応えのある時期ですよ。